「北極海の砕氷船」いったい何しに大阪へ…? 万博だけじゃない、日本含む4か国の“重大ミッション”とは?

カナダ沿岸警備隊の軽砕氷船「サー・ウィルフレッド・ローリエ」が大阪港に姿を現しました。その寄港目的は大阪・関西万博と連動した広報活動だけではなく、ある「重大ミッション」が関連していました。

めっちゃ広大な北太平洋、どうカバーする?

 今回、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は「サー・ウィルフレッド・ローリエ」の報道公開に参加しました。そこで、同船のフレデリック・ハミルトン船長から、今回のノース・パシフィック・ガード作戦における取組みについてお話を伺うことができました。

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記者団の質問に答えるフレデリック・ハミルトン船長(左)(稲葉義泰撮影)。

 まず、広大な北太平洋において、違法操業する漁船団をどのようにして発見するのでしょうか。ハミルトン船長によると、これは非常にスケールの大きな話だといいます。

「まず、宇宙空間に配置された人工衛星により、自動船舶識別装置(AIS)の信号を発していない不審船舶を捜索します。続いて、沿岸警備隊が保有する固定翼機により、不審船舶がいる海域を実際に捜索し、その位置を特定します。最終的にそこへ船舶を派遣し、当該船舶に対する乗船検査を実施するのです」

 さらに、乗船検査に際しては、もしかすると不審船舶に危険な物が積み込まれていたり、あるいは乗員による抵抗を受けたりする可能性もあります。そこで活躍するのがドローンであると、ハミルトン船長は言います。

「我々は小型の商用ドローンを本船に搭載しています。これにより、乗船検査に先立って事前に船内などを捜索したり、あるいは周辺の海域を警戒したりする手法をとっています。それ以上の広さの海域における捜索は、固定翼機により実施することになります」

 また、今回のノース・パシフィック・ガード作戦参加にあたり、「サー・ウィルフレッド・ローリエ」は違法操業漁船の監視だけではなく、北太平洋における回遊魚の活動エリア分析や、海水サンプルの回収を通じたマイクロプラスチック汚染の実態解明など、海洋環境保護に関するさまざまな活動に従事します。

 こうした活動を通じて、カナダはインド太平洋地域における「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、日本を含めた各国との協力を深化させているのです。

【でっかいクレーン付いとる!!】日本では超レアな砕氷船「サー・ウィルフレッド・ローリエ」を写真で(画像)

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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